猫の鼻腔内リンパ腫
猫の鼻腔内腫瘍の中で最も多いのが鼻腔内リンパ腫です。症状は鼻炎と同様にくしゃみや鼻汁、鼻詰まりなどが一般的ですが、鼻腔内リンパ腫などの鼻腔内腫瘍の場合には、鼻出血や眼球・瞬膜の突出、顔面の変形などが認められることが多いです。また、治療に反応しない場合や進行性に悪化する場合には腫瘍の可能性が高くなります。鼻腔内リンパ腫は腎臓にも病変を伴うことが多いとされており、ほとんどがB細胞型と言われています。
診断
身体検査
鼻閉塞の有無、下顎リンパ節の腫大などを評価します。
血液検査
異型リンパ球の有無などを評価します。
腹部超音波検査
腎臓やリンパ節を中心に評価を行います。
細胞診検査
病変が鼻腔外に存在する場合には実施が可能です。
リンパ腫に典型的な所見が認められる場合には診断が可能です。
腎臓に病変を認める場合には、腎臓病変の細胞診検査も可能です。

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クローナリティー検査
B細胞型、T細胞型の分類を行います。
CT検査
腫瘍の位置や拡がり(皮下、篩板など)を評価します。
リンパ節や腎臓などその他の臓器も評価します。
組織生検および病理組織学的検査
CT検査をもとに病変の採取を行い、病理組織学的検査を行います。
生検にはストロー、生検鉗子、鼻腔鏡を用いた方法があります。



治療
治療の選択肢には、化学療法、放射線治療があり、それぞれ単独で行う場合や併用する場合もあります。
化学療法単独、放射線治療単独、化学療法+放射線治療を併用した場合の治療効果の優劣は結論が出ていません。
・それぞれの治療の成績
化学療法単独で治療を行った場合の生存期間中央値 3-15ヶ月
放射線治療単独で治療を行った場合の生存期間中央値 15-31ヶ月
化学療法+放射線治療を併用した場合の生存期間中央値 5-31ヶ月
・化学療法
多剤併用療法による治療が推奨されます。細胞型(T細胞またはB細胞)によって選択する薬剤が異なります。
・放射線治療
腫瘍が鼻腔内のみの場合には放射線治療単独で治療を行う場合があります。
腫瘍が鼻腔外に拡がっている場合にも、鼻症状の緩和を目的に放射線治療を実施後に化学療法へ移行する方法もあります。
・プレドニゾロン
リンパ腫に対してプレドニゾロンは一定の効果を示します。単独での治療効果は低いので、緩和目的での治療となります。
飼い主様へ
猫の鼻腔内リンパ腫は、「鼻炎が治らない」「鼻血が出る」などの一見軽い症状から始まることがあります。しかし、早期に正確な診断を行い、適切な治療を開始することで、長期間の寛解(がんが見えなくなる状態)を得られる可能性があります。一方で、症状が鼻炎に似ているため、ステロイド(プレドニゾロン)を先に使用してしまうケースも見られます。プレドニゾロンは炎症を抑える効果やリンパ腫に対しても一定の効果があるため、一時的に鼻づまりや鼻水が改善して「良くなった」と感じることがあります。しかし、実際には腫瘍が進行しており、見た目の改善の裏で病気が広がっている場合もあります。そのため、長引く鼻の症状に対しては、薬を試す前にCT検査や組織検査で原因をしっかり確認することがとても重要です。「慢性的なくしゃみ」や「片側の鼻づまり」「血の混じった鼻水」などが続く場合には、どうぞ早めにご相談ください。
*画像提供:松原動物病院

