猫の乳腺腫瘍

猫の乳腺腫瘍は約85〜93%が悪性腫瘍の乳腺癌とされています。避妊(卵巣摘出/子宮卵巣摘除)がリスク軽減に有効で、初回発情前での避妊手術によりリスクを90%以上減少させることが可能です。また、平均発症年齢は10-12歳であり、シャム猫での発生率が高いと報告されています。転移部位としては肺やリンパ節が多く、診断時のリンパ節転移率は25%、肺転移率は22%と報告されています。肺転移や癌性胸膜炎による呼吸状態の悪化から、乳腺癌が見つかる場合もあります。

身体検査

 乳腺腫瘍の数、大きさ、存在部位を評価します。

 鼠径リンパ節、腋窩リンパ節の腫大を評価します。

細胞診検査

 基本的には上皮系細胞集塊が採取されます。

腹部超音波検査

 腹腔内リンパ節、肝臓などの評価を行います。

胸部レントゲン検査

 肺転移、リンパ節、胸水などを評価します。

CT検査

 肺転移、リンパ節転移の評価を中心に行います。

外科治療

 転移が認められない場合には、第一選択の治療となります。

 犬とは異なり、片側全摘出術や両側全摘出術のような広範囲での切除が推奨されます。

 また、リンパ管を含めて一括での腋窩・副腋窩リンパ節の摘出が推奨されます。

 両側全摘出術の場合には片側ずつを2回に分けて実施する場合が多いです。

 転移がある場合でも、腫瘍の自壊によるQOLの低下が認められる場合には、緩和的に切除を行う場合があります。

右側乳腺全摘出術
縫合後
緩和的な乳腺腫瘍摘出
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化学療法

 外科治療後に化学療法を行う場合がありますが、実際の有効性は不明(有効であった報告となかった報告があります)です。

 当院では、病理組織学的検査によりリンパ節への転移や脈管内浸潤を認める場合には術後の化学療法を推奨しています。

予後はステージ(腫瘍サイズ)や病理組織学的なグレード、術式によって異なります。

・腫瘍のサイズ:2cm以下 3年以上、2-3cm 15-24ヶ月、3cm以上 4~6~12ヶ月

・Stage(1-4):29ヶ月、12ヶ月、9ヶ月、1ヶ月

・組織学的グレード分類(Grade1-3):36ヶ月、18ヶ月、6ヶ月

・術式:両側全摘 18~30ヶ月、片側全摘 9.6~12ヶ月

猫の乳腺腫瘍は、犬に比べて悪性の割合が非常に高いことが知られています。そのため、若いうちの避妊手術による予防がとても重要です。もし、愛猫の乳腺付近(お腹や胸のあたり)にしこりやふくらみを見つけた場合 は、「小さいから大丈夫」と様子を見るのは危険です。早期に診断・治療を行うことで、予後が大きく変わることがあります。気になる症状がありましたら、お早めにご相談ください。

*画像提供:松原動物病院