猫の消化器型リンパ腫(小腸・高悪性度)

消化器型リンパ腫は猫の消化管に発生する腫瘍の中で最も一般的な腫瘍です。リンパ腫はどの年齢の猫にも発生しますが、高齢での発生が多いとされています。消化器型リンパ腫は、胃や小腸、大腸などの消化管に限局する場合と、腸間膜リンパ節や肝蔵・脾臓への浸潤を認める場合もあります。腫瘍は1カ所に限局する場合もありますが、一般的には腸管全体にびまん性に拡がっている場合が多いです。消化器型リンパ腫は大腸よりも小腸に 多く発生します。症状としては、慢性的な嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少などが認められます。

身体検査

 腹部触診により腫瘤の有無を評価します。

血液検査

 血液凝固系を含めた評価をします。

腹部超音波検査

 消化管腫瘤、リンパ節、その他の臓器を評価します。

 正常な小腸は5層構造をしており、粘膜層と筋層の厚さの割合は1:1とされています。

 消化管腫瘍の場合には、以下の2つのタイプに分類されます。

 ・五層構造の破壊や腫瘤を形成する貫壁型(腫瘤型)

 ・消化管の粘膜や筋層が広範囲にびまん性に肥厚するびまん性型(粘膜型)

超音波検査での小腸の見え方
超音波検査:小腸

細胞診検査

 消化管腫瘍が腫瘤型の場合に実施します。

 細胞診検査によって診断が可能な場合は多いです。

クローナリティー検査

 T細胞またはB細胞型の評価を行います。

5層構造の破壊=腫瘤型
筋層の肥厚=粘膜型
消化管腫瘍の分類

内視鏡検査

 消化管腫瘍が粘膜型の場合に実施します。

 粘膜層や筋層の肥厚はその他の消化器疾患でも認められます。

CT検査

 消化管腫瘍が腫瘤型であり、外科治療を検討する際に実施します。

 腫瘍の場所や数、周囲への拡がり(リンパ節など)を評価します。

化学療法

リンパ腫に対する第一選択の治療であり、様々なプロトコール(薬剤の組み合わせや投与スケジュールなど)があります。

・多剤併用治療:複数の薬剤を用います。代表的なプロトコールにはCHOP、COPがあります。

 *C:サイクロホスファミド、H:ドキソルビシン(ADR)、O:ビンクリスチン、P:プレドニゾロン

・単剤治療:1つの抗がん剤で治療します。多剤併用治療に比較して副作用が軽減されます。

 *ADRやCCNU(ロムスチン)などが選択されます。

・プレドニゾロン:リンパ腫に対して一定の効果を認めます。

・L-アスパラギナーゼ:酵素であり、リンパ腫に必要なアスパラギンを分解することにより抗腫瘍効果を示します。

クローナリティー検査などによるリンパ腫の細胞型(T・B細胞)によって、使用する薬剤が異なります。

外科治療

腫瘍が限局している場合には、外科治療によって長期生存する場合が報告されています。

また、腫瘍による消化管閉塞の予防や解除、化学療法により消化管穿孔(約20%という報告)の予防のために実施する場合があります。

消化器型リンパ腫は残念ながら予後不良な疾患となります。

化学療法に反応を示した場合には長期生存する場合があります。

多剤併用療法:MST 3~7ヶ月

CCNU:MST 3ヶ月

L-アスパラギナーゼ:MST 5~8ヶ月

外科+化学療法:MST 3~14ヶ月

化学療法に反応した場合 MST 11ヶ月以上

猫の消化器型リンパ腫は、基本的には予後が不良で病気の進行も早いことが多い疾患です。しかし、外科手術が可能な場合や、化学療法に反応が得られた場合には、穏やかに過ごせる時間を延ばせる可能性があります。そのため、状況によっては積極的な治療を検討する意義があります。一方で、外科手術や化学療法には、通院や投薬、副作用などの負担が伴うこともあります。治療を選択する際には、動物の性格やご家族の環境などを考えながら、治療によって得られるメリットと負担を総合的に考えることが大切です。

*画像提供:松原動物病院