猫の肺腫瘍
肺腫瘍には、肺自体から発生する原発性腫瘍と、他臓器の腫瘍(原発巣)が肺へ転移性腫瘍の2種類に分類されます。猫の原発性肺腫瘍は稀な疾患であり、発生率は0.7%程度とされています。猫の原発性肺腫瘍の75-95%が上皮性悪性腫瘍(=肺癌)であり、その中で肺腺癌が最も多く60-70%を占めています。猫の肺癌は転移率76%と高い腫瘍であり、その他の肺やリンパ節、胸膜、骨格筋、皮膚、肝臓、脾臓、脳、腎臓、消化管、骨への転移が報告されています。また、猫の肺癌の転移部位として指が有名であり、肺指症候群と呼ばれます。肺指症候群では趾端の腫脹、出血、化膿性の漿液分泌、趾端の骨融解が認められます。肺腫瘍の臨床症状としては、呼吸困難や発咳、頻呼吸、喀血(10%)などの呼吸器症状が多いですが、食欲低下や嘔吐/下痢(19%)などの消化器症状も認められます。最終的には肺腫瘍の進行や癌性胸膜炎による胸水貯留による呼吸困難や一般状態の悪化により衰弱し、亡くなってしまいます。
診断
身体検査
原発巣(乳腺腫瘍やその他の体表腫瘤)の有無、指先の評価を行います。
胸部レントゲン検査
肺腫瘍の有無、リンパ節などの評価します。



腹部超音波検査
原発巣がないかを探索します。
CT検査
腫瘍の拡がり、リンパ節の評価、原発巣の探索を行います。
外科治療を行う上では必須の検査となります。
外科治療が適応となる肺腫瘍



外科治療が不適応となる肺腫瘍:転移所見あり



治療
外科治療
原発性肺腫瘍を疑い、腫瘍の転移が認められない場合に適応となります。
周術期の死亡率は低く、外科治療は比較的安全に実施可能であることが多いです。

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化学療法
外科治療が不適応な場合や、外科治療後の補助治療として実施する場合があります。
猫の肺癌に対して有効性が示された報告はほとんどないのが現状です。
使用する薬剤:トセラニブ、カルボプラチン、ビノレルビンなど
内科治療
主に呼吸困難に対する治療を行い、転移により疼痛が認められる場合には疼痛管理を行います。
・酸素供給:酸素室のレンタル
・胸腔穿刺による胸水抜去
・胸腔チューブ設置:胸水が頻繁に貯まる場合に設置を行います。
・疼痛管理:内服薬、注射薬、貼付薬など様々な種類があります。



予後
外科治療が適応であり、予後不良因子が認められない場合には長期生存が期待できます。
予後不良因子は以下の通りとなります。
・病理組織学的な悪性度:低悪性度 24ヶ月、高悪性度 3ヶ月
・病理組織学的な分化度:中分化 23ヶ月、未分化 2ヶ月
・リンパ節腫大:腫大なし 18ヶ月、腫大あり 2ヶ月
・臨床症状:なし 19ヶ月、あり 0.1ヶ月
・胸水:なし 1-15ヶ月、なし 0.1ヶ月
飼い主様へ
猫の肺腫瘍は転移性腫瘍が多く、外科治療が適応になるケースはあまり多くありません。一方で、原発性肺腫瘍で外科治療が適応となる場合には、 積極的な治療により長期生存が期待できます。そのため、早期の診断と治療が重要になります。もし腫瘍が全身に拡がっており、外科治療が不適応となる場合にも、呼吸を楽にする治療や痛みの緩和を行い、生活の質(QOL)の維持と改善をすることができます。猫ちゃんの性格やご家族の思いを丁寧に伺いながら、「その子にとって最も良い選択は何か」 を一緒に考えていきます。
*画像提供:松原動物病院

