犬の多中心型リンパ腫(高悪性度)

犬の多中心型リンパ腫は犬においても最も一般的な腫瘍であり、リンパ球という免疫に関わる細胞が腫瘍化して全身のリンパ節(首、脇の下、後肢の付け根など)や脾臓、肝臓などに広がる悪性腫瘍です。犬のリンパ腫には多中心型、消化器型、縦隔型、皮膚型などがありますが、多中心型リンパ腫の発生が最も多く、形態学的にさらに細かく分類されます。発症は主に6〜10歳の中高齢犬に多く、ボクサー、バセットハウンド、スコティッシュテリアなどでやや多いとされていますが、どの犬種・性別でも発症する可能性があります。初期には無症状のこともありますが、首や顎の下、膝の後ろなどのリンパ節が腫れてしこりとして触れるようになり、進行すると元気や食欲の低下、体重減少、発熱、嘔吐・下痢、呼吸困難、黄疸、貧血などが見られることがあります。リンパ節の腫れは痛みを伴わないため気づかれにくく、「最近首のしこりが大きい」「少し元気がない」といった小さな変化が早期発見のきっかけになります。

身体検査

 体表リンパ節の触診を行います。

 腫大しているリンパ節のサイズや硬さを記録します。

細胞診検査

 正常のリンパ節では小型リンパ球が80~90%を占めます。

 大細胞性リンパ腫の場合には大型リンパ球が50%以上の場合にはリンパ腫を強く疑います。

 小細胞性リンパ腫の場合には細胞診検査での診断は困難な場合が多いです。

体表リンパ節
細胞診検査:大細胞性リンパ腫

胸部レントゲン検査

 胸腔内リンパ節、肺野の評価を行います。

腹部超音波検査

 肝臓や脾臓、腹腔内リンパ節を評価します。

クローナリティー検査

 細胞型(T細胞性またはB細胞性)を評価します。

組織生検(リンパ節摘出)および病理組織学的検査

 組織型の評価にはリンパ節摘出による病理組織学的検査が必要です。

リンパ腫の分類
腹部超音波検査:蜂巣状の脾臓
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化学療法

リンパ腫に対する第一選択の治療であり、様々なプロトコール(薬剤の組み合わせや投与スケジュールなど)があります。

・多剤併用治療:複数の薬剤を用います。代表的なプロトコールにはCHOP、COPがあります。

 *C:サイクロホスファミド、H:ドキソルビシン(ADR)、O:ビンクリスチン、P:プレドニゾロン

・単剤治療:1つの抗がん剤で治療します。多剤併用治療に比較して副作用が軽減されます。

 *ADRやCCNU(ロムスチン)などが選択されます。

・プレドニゾロン:リンパ腫に対して一定の効果を認めます。

・L-アスパラギナーゼ:酵素であり、リンパ腫に必要なアスパラギンを分解することにより抗腫瘍効果を示します。

クローナリティー検査などによるリンパ腫の細胞型(T・B細胞)によって、使用する薬剤が異なります。

放射線治療

化学療法に放射線治療を併用する治療法が報告されており、これまでの報告では良好な治療効果が得られています。

ただし実施には注意点があるため、治療を検討される場合にはご相談いただくことをお勧めします。

リンパ腫の予後因子として、以下の内容が報告されています。

・サブステージ:サブステージbがサブステージaより予後が悪い

・細胞型:T細胞性がB細胞性より予後が悪い

・臨床ステージ:ステージ5がステージ1・2より予後が悪い

・治療反応:治療により完全寛解した場合は、寛解しなかった場合より予後が良い

プロトコールの選択によっても生存期間が異なります。

・CHOP 6~12ヶ月

・COP 8ヶ月

・ADR 8ヶ月

・CCNU 6~8ヶ月

・プレドニゾロン 1~2ヶ月

多中心型リンパ腫の治療の中心は化学療法で、選択するプロトコールによって費用や通院回数、動物様の体への負担は異なります。一般的には治療強度が高い(多剤併用療法など)ほど再発までの期間や余命が長くなる可能性があります。そのため、「どこまで積極的に治療するか」をご家族と一緒に話し合い、生活スタイルやわんちゃんの性格・体調に合った治療を選ぶことがとても大切です。どの治療を選んでも、私たちはできる限り負担を減らしながら、その子が穏やかに過ごせる時間を少しでも長くできるよう全力でサポートします。

*画像提供:松原動物病院